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Merry Christmas to You [Adam Lambert]

ここ数週間、Adamについて私なりに書きたかったことがあったのですが、全然まとまらなくて。

でもそんな時に、石井ゆかりさんの書いた「禅語」(ピエブックス)と「愛する人に。」(幻冬舎コミックス)を読んで、本当に書きたいことがわかりました。ひょっとしたら今までAdamのことはたくさん書いてきましたが、これが一番言いたかったのかも(笑)

記事を書くにあたって、多大な影響を受けた石井ゆかりさんと、著「禅語」と「愛する人に。」に心から感謝いたします。

私がAdam Lambertを初めて知ったのは「American Idol Season 8」だった。「American Idol」という番組は、基本的に視聴者の手に全てが委ねられている。究極のところ、審査員達が何を言おうと、候補者達の運命を、その後の人生を左右する命運を握っているのは、全米の視聴者なのだ。不特定多数の何千万人といるアメリカの人達に自分に投票してもらうという、この恐ろしい事実に、人の目を常に気にする小心者の私が気付いた時、背筋が凍ってしまった。

もし自分が候補者だったら「歌えるだろうか?」ということの前に「視聴者に気に入られるだろうか?」と必要以上に悩んで夜も眠れないだろう。私はAdamが出て来た時、その圧倒的な歌唱力とパフォーマンス、魅力的な外見を見て、とても自信を持った人に見えた。間違いなく、彼は最後まで残るだろう、という確信さえあった。だが、実際、最後まで残れるかどうかを決めるのは、全米の視聴者なのだ。

視聴者の投票の前に、唯一聴けるのが審査員達の批評。良いコメントはその後の自信にもなるし、悪いコメントは内外への影響力は計り知れない。Adamにとって、本当に幸運だと思ったのは、TOP13の「Black Or White」初めての大舞台で、本格的な視聴者投票が始まる初回の、一番最初のコメントをした審査員がPaulaだったことだ。

スタジオの観客の割れんばかりの大歓声・拍手に煽られるように、Paulaも興奮していた。「この大歓声を聴いて、Adam!」と後ろの観客席を見るように促し、息切れしそうに、表現できない想いを一生懸命、言葉にするように「こんな自信溢れるステージは過去のAmerican Idolでもなかった。ステージだってことも忘れてたわ、だって私の目には貴方しか見えなかったもの!」

この言葉を聴いたAdamの表情が歪む。まるで泣き出しそうな子供の顔だ。嬉し涙を堪えるように、溢れる感情を抑えきれないこのAdamの顔を見た時に、私の中で何かが変わった。彼の中にある見えない何かに触れたような気がしたのだ。「あなたはあるがままでいいのよ」と肯定されることが、それまでのAdamの人生の中で、大きな意味を持つ言葉だったとは知る由もなかった。





毎回の視聴者からの投票結果を聴く際も、Adamはいつも真剣だった。今日、どんなに自分が良いパフォーマンスをしても、全ては視聴者の投票次第。何が起こってもおかしくない、自分が翌日、旅の終わりを告げられるかもしれないのだから。Adamはいつも結果を告げるRyanの顔をしっかりと見つめ、彼の言葉を噛みしめながら聞いていた。これは自分の運命と対面するという恐怖との戦いでもあった。

「Safe」と言われる度に、Adamは少しだけ強張った笑顔を見せた。本当に?・・・という不安と、旅を続けられるんだ・・・という安堵と。そして必ず「Thank you」と感謝の言葉を口にしていた。自分のことだけではない、TOP7でMattが落ちた時、審査員達が「Judge’s Safe」を使うか、最終決議をMattに告げる前、脇で見守っていたIdol達の中で、Adamはずっと両手を組み、祈るようにしていた。そして、Mattの「Judge’s Safe」が確定した時、真っ先にMattへ祝福に駆け寄ったのはAdamだった。

Adamが唯一、心が揺れているよう見えたのはTOP3の結果発表の際だ。最初はRyanの顔を見ていた。だが、Krisが一抜けし、Dannyと自分のどちらがFinaleに進むかという時、Adamの中に不安が過る。Bottm3に入ったことのないDannyとBottm3に入ったことのある自分。唇を噛みしめながら、この時ばかりは、Adamもずっと下を向いていた。Ryanが告げる「Krisと一緒に次のステージに進むのは・・・・・Adam Lambert」

自分の名前を告げられた時、思わず手で顔を覆ってしまったAdam。喜びの声とともに、信じられない・・・本当なの?と何度も頭に手を当てたりしていた。だがそれは同時に、Dannyの旅が終わったことを告げる時でもあった。Dannyが「You’re So Beautiful」を歌っている時のAdamの横顔は決して勝者の顔ではなかった。

私はAdamを、私と同じように、自分の心の中に脆く、傷つきやすい部分を持つ、普通の人だと常々思っていた。誰かに愛されたいと願い、全ての人に愛されるのは難しいと知っている。そしてまた同じ心の中に、誰よりも強くありたいと願う、誇り高くありたいと願っている、一人の人間だと。

この世は、自分一人では生きていけない。必ず誰かと、他人と関わり合っていかなければいけない。人に好かれる、というのは本当に大変なことなのだ。たった一人の人に自分を好いてもらう、ということでさえ全て自分の努力でなんとかなるものではない、ということを私達は知っている。ましてや自分が好きな人ならなおさらだ。そしてもっとたくさんの人に愛される、というのは自分の力の範疇を超えている。

誰しも壊れそうな心を抱えていて、泣きそうになりながらも、倒れそうになりながらも、毎日歩いて、生きている。Adamだって例外ではない。人に、言葉に、傷つく時もある。そのことによって計り知れない孤独と悲しみを背負うこともある。でもAdamは傷ついた人達に手を差し伸べる。それはAdam自身が身を持って、その孤独と悲しみを耐えてきたから、相手の気持ちが痛いほどわかるんだと思う。

だから、どんな人であっても人から好意を寄せられた時ほど、自分の価値を信じられる時はない。ちっぽけな自分が、ここにいていいんだ、と自分を支える力になる。それがどれだけ大きな力に、大きな支えになるか、私達は良く知っている。Adamが番組でいつも小さくつぶやいていた「Thank you」という言葉や、バンドや、ファンや、自分を支えてくれる人に対する感謝を忘れず、表情や身体で示している様子に、心が暖かくなる。大切にしていることがよくわかる。

Adamは「本当に自分のやりたいこと」を叶えるために、自分を見つめ続け、彼はその自分の最も弱く、柔らかい部分を、恐怖と正面から向き合い、外側に出す勇気を持った。人は変化を恐れる。でもAdamは変化の恐怖と闘いながら崖っぷちを歩いて来た。落ちる危険性を常に感じながら。一度落ちたら這いあがれなくなるかもしれない奈落の底を前にしても、足を進める勇気を見せてくれた。そんなAdamだからこそ、本当にたくさんの人が彼を愛したのだ。



“愛は最初からそこにあるのではない。

最初にあるのは誰もが惹きつけられるような表面的な魅力や、おもしろさや、優しさだ。

そこに何かの衝撃が走り、人の中の最も弱くやわらかい部分が、外側にむき出しになったとき、

そのほとばしりが誰かの心を震わせて、その人を立ちあがらせ動かして

初めて、魔法のようにそこに愛が生まれる。“


石井ゆかり著「愛する人に。」幻冬舎コミックスより



Adamは変化の中で、自分の中のまだまだ未熟な部分と、成長した部分を感じている。変化し続けることは決して楽なことではない。人は逆境の中で強さを見せることはできても、物事がうまくいっている時はちょっと気が緩んでしまう。嬉しいことも辛いことも受け止める自由な心を持ち、強さも弱さもそのままに自分自身でいられるAdamに私は強く憧れる。

Adam Lambertは、Adam Lambert以外の何物でもない。たった一本の梅の枝に春を感じたり、ピアノの一音に心の琴線が響いたり、堂々としている富士山を見る時に背筋がピンとなるように。時間や変化は訪れても、真の姿は揺るがない。その中にすべてがあるのだから。それを見つけられる心の目をいつも持っていたいと思う。

私にとってAdam Lambertこそが、神からの贈り物だと思う。
ちょっと遅くなったけど、Merry Christmas.

Adamに、皆様に、神の御加護がありますように。

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chacha

ピョルさん

ピョルさんがアダムについて書かれた美しい言葉を読むたびに、
私の中でも何かわさわさと心が騒ぎます。

アダムの歌が素晴らしいのは言うまでもないけれど、
私達がアダムにここまで惹かれるのは、
彼が体現している多様性というか、彼のパフォーマンス自体がそうであったように、変化し続け自分の異なる面に光をあてて表現する、どこか強くて脆い底知れない人間的な魅力によるものが大きいと感じています。

私が最初にアダムを見たのはTOP13のMJ WEEKでした。

青い瞳に黒い髪という組み合わせがちょっと不思議で
流行のEMOヘアにスタイリッシュな衣装とエッジィな歌声、
辛口のサイモンから絶賛されたことで、強く印象に残りました。

ちょうどこの少し前に、アダムのゲイ疑惑写真がネット上に出回り、
アダム自身も投票行動への影響にナーバスになっていたということを、後になって知りました。

予選の最初から注目される有力候補で、TOP36でSatisfactionを歌ったときの傲岸不遜にも見える自信に満ちた態度とは変わって、Black or Whiteのアダムは、不安と脆さを内に抱え葛藤しているようでしたね。
そしてそれを打ち払うように、納得できるまでリハーサルを繰り返した。
歌詞に自分の思いを込めて。

アダムはいつも自分は何者かと問い続けざるを得なかっただろうし、
その意味で、少数の側にいる者に対して、
温かいまなざしを常にもっていますよね。
アダムは、LAのアングラの世界で長い間もがいていたし、イケナいことも時にしてきたんだろうけれど、
それでも彼にはずっと愛されて成長した人間のもつある種の健全さ、おおらかさを感じます。
アダムは愛に包まれて、愛を求めてこれまで生きてきたんだろうと思います。

私もピョルさんと同じく、アダムの'Thank you'と、バンドへの気遣いが強く心に残っています。
そしてTOP3のResult、ダニーの歌でのアダムの横顔を私は忘れることができません。
勝ち残った興奮を抑えきれないように体を動かすクリスとは対照的に
アダムは微動だにせず去るダニーの歌に聴き入っていました。彼の胸に去来したものは何だったのでしょうか。

アダムがこれから歩む道は、たぶん誰も歩いて来なかったものになるでしょう。

2009年は、神様が私達にアダムを贈り物として与えてくださった。

そして私には、ピョルさんとの出逢いも素晴らしい贈り物となりました。

ピョルさん、どうぞよいお年を

そして来年もどうぞよろしくお願いします。

長文で失礼しました。

chacha拝

by chacha (2009-12-27 01:02) 

ピョル

chacha様、こんにちは。コメントありがとうございます。

私こそ、chacha様に出会えて感謝しています。いつも自分目線でしかAdamの表面の記事を書けない私に、Adamの中の繊細な部分を教えてくれるのが、chacha様の言葉でした。

これまでずっと、私はAdamの勇敢な部分や、変化を恐れない部分を強調した記事を書いてきましたが、実際のところ自分が好きになったAdamは、Adamのどの部分に惹かれたのだろう?と考えるようになりました。

私が最初にAdamを見たのはハリウッド予選のCherの「Believe」でした。その歌声に、切ない表情に、惹かれたのがきっかけでした。

実はTOP36はすっ飛ばしていて(苦笑)次に見たのがTOP13だったので、その時のAdamの顔とハリウッド予選の顔を続けて見たので、逆に私はダイナミックな歌やパフォーマンスの部分と、Adamのエモーショナルな部分とのギャップの大きさに心をつかまれました。

後からTOP36を見ると、chacha様がおっしゃるようにちょっと生意気に見えるAdamでしたね(苦笑)。それがTOP13で揺れているように見えたのは、ネットに写真が出回った直後だったからなのですね。

そう考えると、自信たっぷりのTOP36のインタビューと、とても謙虚なTOP13のインタビューとの違いもよく分かります(笑)

歌手としての、アーティストとしてのAdamはとてもカリスマがあって、堂々としていて、迫力がありますが、同時にAdamは、私達と同じように傷つき、悩み、苦しむ人間でもあります。彼は番組でいつもそれを感じさせてくれました。

Adamの周りにはいつも愛があって、家族や友達や仲間の愛に支えられていた。だからこそ、あんな素敵な表情や笑顔ができるんだと思います。

たぶんAdamをデビュー後に見ていたら、そんな部分は見えてこなかったかもしれません。American Idolという番組で最初に見たからこそ、見えたもの、触れた心の揺れだったのかもしれません。そう言った意味では私達は幸運でした。

誰かに惹かれるというのは、今は足りないけど、本来自分の中にあったもの、自分の中に起きた変化によって広がった、心のスペースを埋めてくれるもの、なのだと石井ゆかりさんの本に書かれていました。

Adamは私にないものをたくさん持っている、私が怖くて触れられない部分も、本来私が持っているだろう部分も、彼はそれを明らかにしてくれる。いつだったかAdamは私のマイルストーンだ、と書いたことがありますが、彼が歩いて来た道、これから歩む道は、私にとって道しるべになるのではないかな?と考えています。

実は2009年は水瓶座のAdamにとっては12年に一度のすごい年だったんです。拡大と幸運の星、木星が水瓶座(アイデンティティーを表す、自分の部屋)にいましたからね。そして射手座の私にとっては、2009年は「コミュニケーション」の年でした。自分から出かけて行き、たくさんの人と出会い、たくさんの言葉を交わした中で、たくさんの貴重で素晴らしいものを見つけました。

愛や、友情に触れ、自分にできることを見つめることができた、素晴らしい年でした。

この記事は、chacha様がきっかけでもあるんですよ。いつかchacha様のおっしゃるAdamの繊細な部分を、私が一番共感できる部分を書きたい、と思っていたのですよ。だからコメントいただけて、本当に嬉しいです。

どうぞ、よいお年をお迎えください。

本当に、今年はお世話になりました。ありがとうございます!
by ピョル (2009-12-27 10:42) 

ピョル

noel様、nice!ありがとうございます!
by ピョル (2009-12-28 21:00) 

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